オープンアクセスとは

オープンアクセスの簡略紹介

オープン・アクセス(OA)文献とは,デジタルで,オンライン上にあり,無料,著作権・使用権制限の多くを受けないものを指します。オープン・アクセスは,インターネットおよび著者・著作権保有者の同意によって実現したものです。

大半の学問分野では,学術雑誌はその論文への対価として著者に支払うことはありませんし,だから収入を失わずにオープン・アクセスに同意することが可能なのです。この点から見れば,研究者と科学者は,音楽家や映画制作者達とは非常に異なる状況におかれていますし,音楽や映像のオープン・アクセスに関する議論は学術文献にそのまま当てはまりません。

オープン・アクセスは査読制度と完全に互換性がありますし,学術文献に対するオープン・アクセスを推進しようとしている主要な団体すべてが,その重要性を主張しています。学術雑誌論文の著者が自らの労力を寄贈するのと同様に,大半の学術雑誌の編集者や査読者もまた査読制度に寄与しています。

オープンアクセス文献は,伝統的に出版された文献よりもより安価に製作することが可能ですが,無料でできるわけではありません。問題は,学術文献がより安価に製作できるかどうかではなく,読者に料金を請求しアクセス障壁を作ることよりも,料金を支払うより良い方法があるのかどうかということなのです。料金支払いのビジネスモデルは,オープンアクセスがいかに提供されるかによって異なります。

学術文献のオープン・アクセスを提供するには,主として二つの方法があります。つまり,オープン・アクセス雑誌とオープン・アクセス・アーカイブあるいはリポジトリです。

  • オープン・アクセス・アーカイブあるいはリポジトリは査読は行わず,蓄積保存した資料を世界中に無料で利用可能にするものです。オープン・アクセス・アーカイブあるいはリポジトリには,査読を受けていないプレプリント,査読済みのポストプリント,あるいはその両方が含まれています。アーカイブは大学や研究所のような研究機関におかれていることもありますし,物理学や経済学のような学問分野固有のものもあります。著者は他者の許諾なしにプレプリントを蓄積できると考えられますし,大半の学術雑誌はすでに著者がポストプリントをアーカイブすることを許可しています。アーカイブが,オープン・アーカイブ・イニシアチブ (Open Archive Initiative: OAI)のメタデータ・ハーベスティング・プロトコルに対応していれば,他のアーカイブと相互運用が可能であり,利用者はどのようなアーカイブが存在し,どこに設置され,どのようなものを含んでいるのかということを知らずに,利用者は自分の学術文献を見いだすことができるのです。現在,OAI互換のアーカイブを構築運用するためのオープンソースのソフトウェアがありますし,世界中で使われようとしています。アーカイブの構築運用に必要な費用は,あってないようなものです。ちょっとしたサーバの容量と技術者の作業時間が必要なだけです。
  • オープン・アクセス雑誌は,査読を行い,受理された論文を世界中に無料で利用可能にするものです。オープン・アクセス雑誌にかかる費用は,査読,原稿の準備,サーバの容量からなります。オープン・アクセス雑誌は放送局やラジオ局と同じような方法で,運営されます。つまり,コンテンツの流通に関心があるものが製作費を前もって支払うことで,適切な機器を持つものなら誰でも無料でアクセスできるというものです。これは,学術雑誌が運営元の大学や学会から助成金を受けているということを意味する事もあります。また,著者や著者のスポンサー(雇用者や助成機関)に受理された論文の処理費用を請求することもあるかもしれません。処理費用を請求するオープン・アクセス雑誌は,たいてい経済的に支払いが困難な場合はそれを免除しています。研究機関から補助金を受けているオープン・アクセス雑誌は処理費用を請求しない傾向にありますし,他の出版物,広告,有料のオプション,追加サービスからの収入があれば,より低額の補助金や料金で入手可能です。研究機関やコンソーシアムのなかには,料金の割引契約を結んでいるものもあります。オープン・アクセス雑誌を出している出版社には,年間契約をしている機関に所属している全研究者に投稿料(処理費用支払い)の免除をしているところもあります。査読制を設けたオープン・アクセス雑誌の費用を支払う方法を見つけるには多くの創造的余地が残されていますし,現在の私たちがその独創性と想像力の限りを尽くしたとはとても言えないのです。

より詳細な紹介(参考文献のリンクあり)は,私の「オープン・アクセス概略」を見てください,https://legacy.earlham.edu/~peters/fos/overview.htm.

本文は,Peter Suber氏の「Very Brief Introduction to Open Access」を日本語訳したものです。