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SPARCの10年

今年でSPARCが発足してからちょうど10年を迎え,Library Journal誌にHeather Joseph氏へのインタビュー記事が掲載されていました。最近は,オープンアクセスに方向性を変えているが,当初からの教育,インキュベーション,アドボカシーについても今後も取り組んでいくそうです。ただ,これ以上はシリアルズクライシスについては既知のものなのであまり話す必要性は感じていないようで,今後は,危機を強調するよりも新しい機会を促進する組織として位置づけたいと思っているとのことです。
日本も,コンソーシアム契約で海外刊行学術雑誌の国内所蔵タイトル数の減少傾向に歯止めがついたのかもしれませんが,日本全体での傾向を示すのではなくて,各大学図書館レベルで,実はこんなに所蔵タイトル数が減っているんですよ,電子ジャーナルでアクセスできるようになりましたが,いつまでも契約できるわけではありません,先生が発表した雑誌を契約している大学図書館もこんなに減っているんですよ,読まれ引用される機会も減ってしまいますよ,だから機関リポジトリに登録してくださいね,などと身近な危機を強調しても良いのかもしれません。
 

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藤田 洋 2007年8月10日 11:07

ビッグ・ディールとは何でしょうか?
大学の予算は有限で,電子ジャーナルは無限に存在します。高額かつ不透明な価格政策,商業出版社のM&A(合併及び買収),市場の寡占化などの企業論理に図書館の予算が圧迫されています。図書館コンソシアムは,単なる購買集団ではなく,電子ジャーナル及び学術データベースの価格モデル,出版流通,情報の発信,などに影響を与える存在であるべきです。
電子ジャーナルの広汎な実現こそが,機関リポジトリの存在を霞ませています。大学教員にとっては,オープンアクセスは達成されたかの感があります。では,ビッグ・ディールとはどのようなものでしょうか。
電子ジャーナルの出現以来,その価格モデルは少しずつ変化しています。今,出版社単位の有料パッケージ購入によって広範なサービスが提供されている。これをビッグ・ディールと呼んでいます。
電子ジャーナルの利用は,出版社やベンダーの電子ジャーナルのサーバにインターネットを介してアクセスするものが大半で,その契約は物品の供給契約ではなく,サービスのライセンス(使用許諾)契約となっています。
過去の冊子体の購読総額に加えて,電子ジャーナルの利用料金として,冊子体購読総額の5%前後の料金を追加で支払わなければなりません。契約期間内は冊子体雑誌の中止が原則としてできません。一般的には複数年予約購読・キャンセル制限条項・年間物価上昇へのキャップ(Cap=上限)などの特徴があります。
たしかに,割高であって現実的ではありませんが,電子ジャーナルの利用を一部売り(ペーパービュー) で限定して購入できるし,全面的にILLで対応することも可能です。十分な検索機能が装備された商品であるゆえに,院生などにまで利用させるなどのメリットが注目されています。獲得された輝かしいサービスが他の秩序では供給されそうもないため,一度選択したら最後,ここから全面的に撤退することは難しいと思われます。
個人ユーザーのデータへの不正アクセスの抑制を図書館に負わせる意図を持つ出版社は交渉相手として図書館コンソシアムを選んだとも言えるでしょう。図書館はその立場を相対的に高め,国際的経済動向まで研究しています。残念ながら,機関リポジトリ設立そのものが,外国出版社の価格にすぐに反映するものでは決してありません。ビッグ・ディールによって図書館の予算が毎年圧迫され続けていくことを回避する道は見当たらないのが本音ではないでしょうか。

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